アクアピースネットワーク理事 加藤慎一
2006年4月、過去3度に渡る訪中を終え、北京市延慶県教育委員会へのボランティア活動が始まった。北京市延慶県とは北京市の最北端にある街、中国の市や県という所在呼称は日本とは異なる。中国で"市"というのは日本でいう"地方"と似ている。つまり関東地方や東北地方というような日本を大きく分割した呼称と等しい。中国全土の広さを考えれば分かる通り、地図上での北京は日本でいう地方にあたるわけだ。そして延慶県の広さは日本でいう神奈川県や千葉県等と同等となる。延慶県は前述通り北京の最北端に位置し、北京と河北省の境となる。
中国の経済急成長は2008年の北京オリンピックまで続くだろうという話しをよく聞くが、その急成長の裏には国民の貧富の差が如実に表れている。年収の格差は1000倍を超えると言われ、当然であるが地方に行けば行くほど低収入となる。収入が異なれば子供への教育への影響も少なからず否めない。北京の中心部で教育を受ける子供達はパソコンのキーボードを叩いていれば、地方の子供達は鉛筆や消しゴムも充分に購入できないという両極端な姿がある。
2005年度から数回の訪中を終え、我々アクアピースは延慶県教育委員会を通して延慶県の小学校へ遊戯道具や学習用品を支援する運びとなった。今回はこの活動の始めての支援となることから、アクアピース理事である奈良坂氏とともに遊戯道具を持参して北京入りした。電子ピアノとアルト笛、サッカーボールやバドミントンラケット等、持参ということもあり少量ではあったが直接子供達へ手渡ししたいという気持ちが強く、大きなバッグを両手で抱えての訪中となった。
北京空港からは教育委員会の方にクルマで送迎していただく。持参した遊戯道具がクルマに入りきらないというちょっとしたハプニングもあったが、無事延慶入りすることができた。
今回訪問したのは延慶県姚家モェ中心小学校。歴史の古い農村中心小学校である。この学校には26教室に528名の小学生が通学している。学校所有の面積は1万460平方メートル。校舎面積は1408平方メートルと広大な敷地を所有しているが、校舎建設は1949年とかなり古い。校舎は何度も修復が重ねられてはいるものの、北京中心部の校舎に比べれば非常に老朽した校舎である。校舎は全てレンガで作られ、組み上げは強度の決して高くない粘土のようなものが使用されているため、大雨や地震による倒壊という危険にさらされている。冬はとても寒く、夏は常に高い湿気となる教室で子供達は教育を受ける。また窓を大きなものにすると壁面自体の強度が落ちることから、教室の窓は小さなものがいくつか設けられているだけで、日差しを室内に取り込むには不充分なものである。天気の良い日でも薄暗い教室で授業を受けることから、子供達の視力低下もここ数年問題視されているとのことだ。
教室に招かれると全校を代表して約30名ほどの生徒たちが迎えてくれた。この地区の学生は小学生に限らず、中学生や高校生もほとんど県を出て出かけることも少ない。この町が特別な観光地でもないことから、海外の人間を見る機会もないようだ。我々日本人は同じアジア圏の人種としてそれほど彼らと見た目に異なる部分は少ないが、聞いたことのない日本語を話す我々に最初は戸惑いを隠せないようであった。
校長先生からアクアピースネットワークの紹介と我々の紹介をしていただく。子供達は興味津々な瞳で校長先生の話しに耳を傾けていた。続いて奈良坂理事の挨拶が始まると子供達は大きな声で挨拶をし、アクアピースネットワークの考え方や日本の子供達の話し等にうなずきながら、理解と歓迎の気持ちで話しを聞いていただけたようだ。
持参した遊戯道具等は生徒に順番に手渡しする。笑顔で握手とお辞儀をしながら受け取った遊戯道具を抱きかかえて席に戻る生徒たちは、喜びを隠せない様子である。我々が教室に入った時に感じた生徒たちの緊張感は完全にほぐれ、遊戯道具を机に載せながら皆ニコニコ笑っていた。
今回は持参のため贈呈物に数量や内容の制約があったが、今後の定期的な支援では、より多くの子供達が活用してもらえるような内容の支援を行っていくことと、この活動を基盤として中国と日本の子供達による国際交流等、双方の国の子供達の教育にアクアピースと延慶教育委員会が協力し、取り組んでいくことを校長先生及び教職職員の方と打ち合わせを行い、第一回目の支援活動は終わった。
|